デザインという言葉
経済産業省と特許庁は、2018年5月に「産業競争力とデザインを考える研究会」の報告書として、「デザイン経営」宣言を公表したそうです(2018年11月日経新聞)。
そもそもデザイン経営って何でしょう?、、、。
私の解釈では、”デザイン経営”とは様々な与件を経理的な数字だけで判断しないで、デザイン的な視点も入れていこうというこれからの経営スタイルのことだと思います。アップルやダイソンなどに代表される”売上よりもデザイン性を重視する経営”というイメージが近いのではないでしょうか。
名刺に”デザイナー”と入っている!
そもそも”デザイン”という言葉はどんなイメージなのでしょう?
私が社会人になったばかりのころ、「設計部」に配属されたはずなのに最初に与えられた名刺に「デザイナー」と入っていて、気恥ずかしさを感じながらクライアントさんと名刺交換をしていたのを覚えています。理工学部出身でデザインのデの字も知らないまま社会人になったので、いきなり”デザイナー”と言われると、クライアントに質問されたとき自信を持って返答できず、萎縮していました。
たぶん、この時私が思っていた”デザイン”というのは、ファッションや芸術などのようないわゆるアーティスティックなものだったのでしょう。デッサンも意匠設計もしたことのなかった私には違う世界の職業のように感じていました。選ばれた職人、生まれつき手に職を持った方々が請け負う仕事なのかと。
現場で感じたこと
しかし、実際に仕事の現場に入ってみると、(新人ということもあり)コピー焼きや模型作り、先輩の描いた図面のトレースなど、「作業」がほとんどの時間を占めていました。先輩の仕事ぶりを見ていても、「デザインワーク」的な、いわゆる考える時間というのは全体の半分以下くらいのイメージでした。まだ周りのことや社会のことがわからないころだったので、「とにかく、手間のかかる仕事だなぁ」という印象を持ったまま日々の雑務に追われていきました。
あるとき、上司にあたる人が「君、試しにこれデザインしてみなさい」という課題を与えてくれたので、初めてある空間を「デザイン」することになったのですが、実際に自分でデザインをしてみて、改めてわかったのが、”絵を描く”以外の部分がすごく多いということ。
与件(規制事項:クライアントの要望や空間規制などなど)を咀嚼して質問や相談しながら”絵を描く(デザインワーク)”作業に入るのですが、与件の理解が甘いとデザインワークにすごく無駄が出ることが分かりました。与件をカタチにする前の解釈も含めてデザインなのだと感じました。
デザインはモノ創りの”過程”
年を経て仕事を任されるようになると、今度は与件の中の最大級の壁”予算”が立ちはだかります。バブルが弾けて不景気のスタート時期と重なり、急速に予算重視にシフトしていったのを覚えています。かっこよくて値段を抑えた「コスパが高い」デザインというのが優先されるようになり、世の中がガラッと変わってきたことを感じていました。
ちょうどこのころ、会社の幹部の方から「デザインをするなら経済を理解しないとダメだよ。日経新聞を読みなさい」とアドバイスしていただいたのを覚えています。これを聞いてから、自分なりにいろいろ考えて、デザインというのはプロデュース的な目線で予算も意識しながらみんなが納得するようなかっこいいものを創る「過程」のことだと理解しました。
その「過程」を会社経営に”かっこよく”盛り込んであるのが「デザイン経営」なのではないでしょうか。
みんなが納得するものというのは、「誰でもすぐに理解できる」ものなので、利用者にも理解されやすい。それこそデザインの根源的な意義だと思います。